土壌について学ぶ -戸隠の地質・地層とは?-

土壌について学ぶ -戸隠の地質・地層とは?-
戸隠山・荒倉山をはじめとする戸隠の特に山々からはホタテ貝などの海中生物の化石が多数出土(※1)

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戸隠のプロフィール
〔地勢・地質〕戸隠は長野県の西北部に位置し、周囲は山々に囲まれ、東西9.9km、南北20.1km、総面積131.7kmの高原地です。地形は複雑を極め、標高約600~1,300mにひろがり、全体的に北に高く起伏が激しい卵形の地形で、森林が総面積の83.5%を占め、窪地にはいくつかの小湖沼や湿地となっています。

戸隠には清らかな河川が流れ、逆さ川は戸隠・黒姫・飯綱山の渓谷を東に流れ、鳥居川となって千曲川と合流し、楠川は戸隠山を源とし、戸隠の中央を南下して裾花川に合流し、さらに長野市街地へ出て犀川に合流しています。

地質は大きく二つに分かれ、北東部から中央部にかけては、第四期火山飯綱山から噴出した溶岩火砕流堆積物火山灰層湖成層などで形づくられています。北部から西部、南部の険しい山地は砂や泥、火山噴出物からなる海底に堆積した地層で形成され、多くの化石を含んでいます。

戸隠からは貝類の化石をはじめ、クジラなどの大型の動物の化石も産出し、特に川下地籍から産出したシンシュウゾウの下顎化石はたいへん貴重な物で、県の天然記念物に指定されています。

〔気象〕夏季は冷涼で、澄んだ空気と清らかな水に恵まれ、避暑地として最適で、北部の高原一帯は古くから観光地として人気を博しています。冬季は日本海側特有の気象状況となり、北西の季節風が厳しい寒気と豪雪をもたらし、毎年スキーヤーで賑わっています。

年間平均気温は8.8℃、平均降水量は1,253mmで、積雪は北部にいくにつれて多くなり、50~200mmと地域によって大きな差があります。

(参考:「戸隠村勢要覧1997」 ※一部の内容を執筆者が現在状況に合わせて加筆・修正しています)
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土壌について学ぶ -戸隠の地質・地層とは?-
戸隠全景の上空写真。起伏の激しい土壌であることがわかります(※1)

私は農業を戸隠の栃原地区というところで行っており、鬼女紅葉伝説で有名な荒倉山の麓に位置します。ここは海底の火山活動によって隆起した地層と飯綱山の火山活動による堆積物の地層が主になって形成された場所だそうです。そのため、火山灰土とゴロゴロ岩がミックスされた土壌であり、粘土質です。「畑を耕すのは一苦労」と地元住民の方々は口を揃えておっしゃいますが、地層の歴史を知ると、遥か古代がしのばれ、かえって魅力的にも思えます。

確かにトラクター等の重機を入れる場合は大きな岩石類が多いため、機械が悪くなってしまうのは不便な点だと思います。しかし、岩石の組成分を調べると、二酸化ケイ素(SiO₂)アルミニウムカルシウム酸素など、多様な元素によって構成されており、野菜栽培に何らかの相互影響が必ずあると考えられます。そう思うと一概に農作業がやりにくいからと言って岩石類を畑から全て取り除いてしまうのではなく、ある程度は良い部分も活かせる工夫ができればと思っています。

岩石が畑にある程度入っていれば太陽光を日中の間に吸収し、夜間に地温が下がるのを防ぐ効果があると言われています。

ちなみに戸隠地質化石博物館では戸隠の地質・自然・歴史を豊富な資料で知り、学ぶことができ、私も何度か足を運んでいます。地質関係以外にも植物のこと、半世紀以上も前の実験機器類の標本なども多数蔵されており、とても参考になります。今回のブログ記事も本博物館で教わった内容を踏まえてまとめ、写真もいくつか使用させて頂いています。

★戸隠地質化石博物館の公式ホームページはこちらから

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海底火山の噴火で出来た荒倉山の凝灰角礫岩(※1)

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安山岩はケイ 酸分 (SiO2)を中程度(60%程 度)含むマグマによって構成されるそうです(※1)

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これは私がお借りしている畑から出てきた岩石類です。取り除くのは大変ですが、種類・色・形状は多岐に渡り、観察し調べてみると農業作業にも生かせそうな知見に結びつくこともあります。自然農法は自然全体への観察とアプローチが大切だと感じます。

続いて面白いのが、この長野県全域の地質調査の一覧。自身の場所を全体との関連で把握できます。

土壌について学ぶ -戸隠の地質・地層とは?-
(※1)

この一覧で見ると、やはり戸隠エリアは火山活動による影響が大きく、玄武岩~安山岩質の土壌のようです。玄武岩はケイ素成分が約45-52%ほどで、安山岩より10%程少ないくらいです。

火山系の岩石にはケイ素分が多いのですが、これにも少し触れたいと思います。海外やかつての日本の農業ではケイバン比率という指標に重きを置かれていたようですが、今はこの比率のことはほとんど耳にしません。これは簡単に言えば、土壌のケイ素とアルミニウムの含有比率のことで、当時ケイ素に注目が集まっていたことが伺えます。

ケイ素は私たちの身体に密接に関わっています。関節血管皮膚毛髪などに多く含まれる生命維持に不可欠な必須微量元素です。特に年齢が若い時には摂取する力が強く、身体の主要な部分を形成していく上で有効に働くと言われています。このために、子供や吸収力の高い健康な人は、柔軟性・弾力性があり、肌ツヤが良く、髪も黒々として美しく、硬い骨を持ちエネルギーに満ち溢れています。

他にも興味深いのはもみ殻・玄米にケイ素が多量に含まれているということです。

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“籾殻中の無機成分の87-97wt%は非晶質の水和した形態のシリカ(SiO₂)と少量のアルミなどの元素から成り立っている。籾殻中のSiO₂水和物として籾殻の表皮細胞とクチクル層の間に蓄積されたものである。”
(1992年7月 北海道工業開発試験所技術資料14,35-35より)

ケイ素はガラスの材料にもなり、非常に安定した結晶構造を持っているとされています。その安定構造ゆえに、半導体の製造で使用される元素であることは精密機器の世界ではよく知られています。

お米にもケイ素は含まれおり、籾殻は米粒を一つひとつガラスコーティングしているようなものだという意見もあります。特に含有量が高いのは玄米です。穀物類の中でも玄米はケイ素をはじめ、様々な有効成分が多量に含まれる優秀な食品と言われています。玄米を食べるようになってから、髪の毛にコシが出て、爪が強くなったという話しはよく聞きます。

ケイ素が多量に植物・野菜に含まれることで抗酸化作用が高まるとも専門家から指摘されています。ケイ素がよく吸収されたお米は味がよく、腐りにくいとプロの生産者でおっしゃる方もいます。

話がケイ素の方面に行きましたが、安山岩~玄武岩が土中に多いということ=野菜がケイ素を多量に吸収するという等式がすぐに成り立つ訳ではないと思いますが、もしケイ素分を野菜が通常よりも多く吸収するために必要な環境条件は何か?ということがわかれば、より高品質な野菜栽培ができるのではないかと思います。今後も迫っていきたいテーマです。

ちなみに山をドライブしていると自然界のパワーを感じるこんな景色をよく目にします。

土壌について学ぶ -戸隠の地質・地層とは?-

植物は土が少ないモロに岩石層の場所でも生育していきます。それは自然界を観察してみれば明らかです。このメカニズムはどう解釈するばよいのでしょうか?岩石土壌でも生育するという点を深めていけば野菜の生育のヒントにもなる気がします。

さて、私の住む地区の近隣に「田頭」という地区があります。ここは縄文時代から人間が住み、営みがなされてきた地域として優れているのではないかと言われています。ご近所の方が「田頭は迫力ある岩窟もあるし、山菜類やきのこ類も豊富にとれるから、たぶん土壌が肥えているんだろうね」とおっしゃっていました。

確かにここは景観が広かれていて、稲作も盛ん、四方は山々に囲まれていて独特のムードと共にエネルギーの高さを感じます。私が戸隠移住後に訪れた場所の中でも、この田頭にある岩窟観音は迫力満点で、戸隠神社の中社・奥社に聳える巨大な杉と同サイズ、もしかするとそれ以上のものも静かに佇んでいます。近くで見ると圧巻の巨大杉です。

土壌について学ぶ -戸隠の地質・地層とは?-

土壌について学ぶ -戸隠の地質・地層とは?-

「農業用地を見極める際はその周辺の木々の生育を見ると良い」の教訓を常に意識するようにしているのですが、そういう面から言えば田頭はかなりエネルギーを蔵した土地であると思います。

田頭からは縄文土器も出土しているとのことです。

土壌について学ぶ -戸隠の地質・地層とは?-
(※1)

「タガシラ」という名前にも惹かれました。日本の古い文献によれば、農業技法・方法を「タガラモリミチ」と言ったそうです。「タ」という言葉は独立分離の思念があり、「タ」が「田」の意になったのは、大地一般から、人間の意志により、独立的に分けられた部分があるのではないかと指摘されています。

たまたま音(オン)が似ているのか、それか縄文時代から何かの意味が込められていたのかはわかりませんが、その土地土地の名称を漢字だけでなく、音(オン)から迫ってみるとまた違った見方、見識も出てくると思います。

また、戸隠はホタテ貝が取れる山としては日本一標高の高い山と言われており、古代の海底火山の激しさを物語っています。その特殊な地形・地層から地質学界では有名らしいです。「大地の違いは作物の違い、大地の生い立ちを学ぶことはとても大切」と博物館でお聞きしました。

江戸時代中頃に活躍をした、本草学の火付け役とも言われる平賀源内らも戸隠の地層に注目し、貝類が出土する場所と書物に残した記録もあるそうです。

土壌について学ぶ -戸隠の地質・地層とは?-
(※1)

土壌について学ぶ -戸隠の地質・地層とは?-

近年注目する方が増えている日本をまたにかける構造線に囲まれています。中央構造線、糸魚川静岡構造線、柏崎千葉構造です。そしてフォッサマグナ地帯です。

この地帯に位置する代表的な山は、戸隠北部は新潟焼山、妙高山、近隣は黒姫山、飯綱山、南部は八ヶ岳、富士山、箱根山、天城山となります。

構造線、フォッサマグナはまた別の機会に焦点を当てて調べたいと思っています。まずは自身の最も基盤となる土壌の理解が大切と思い、ここ1週間ほどはそのリサーチに力を入れてきました。今後も様々な角度から戸隠を眺め、魅力をお伝えしていければと思っています。

※(※1)の表記が付いた写真は戸隠地質化石博物館で撮影させて頂いたものです。

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プロフィール
水谷翔(地域おこし協力隊 戸隠地区)
水谷翔(地域おこし協力隊 戸隠地区)
三重県桑名市生まれ。
2016年5月、長野北部・戸隠に移住し農業に取り組んでいます。
戸隠は3つの巨大な活断層に囲まれたフォッサマグナ地帯であり、火山灰土+海底隆起の肥沃な土壌が魅力的です。
無農薬・有機栽培・標高850m。
高原花豆・果菜類に力を入れています。

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