オーチャードグラスというイネ科の多年草。耐寒性も強く優秀な緑肥と言われています。
前回の記事で微生物について書かせていただきましたが、自然農法を進めていく上で同じく大切なポイントと思われるのが
「緑肥」です。今回の記事は緑肥についてWEBサイトや文献を通じてリサーチした内容をベースにまとめています。
肥料の変遷の歴史を調べると
化学肥料は19世紀末~20世紀初頭の頃から生産されはじめ、昭和初期には
有機肥料を上回る量になっていたそうです。今日の日本では農業で肥料というとほとんど場合、化学肥料が連想されますが、かつての日本では天然由来の肥料が農業でメインに使われていました。
それで思い返されるのは、私が小さい頃(今から25年くらい前)、祖父母が糞尿をくみ取って畑に肥しをやると言って数日に1回くらいのペースで持っていっていました。かつての農業の面影がうかがえる印象深い農作業の記憶です。他には捕れすぎた
魚介類や食用としては不適切な
海藻、そして
緑肥が有機肥料としてかつての日本の農業で用いられていたとのことです。
主な緑肥は窒素固定能力を有する
マメ科、
イネ科、
キク科が挙げられます。
【マメ科】ダイズ(食用・緑肥用として共に優れている)、ホワイトクローバー、レッドクローバー、クリムソンクローバー、レンゲソウ、ヘアリーベッチ、クロタラリア、セスバニア、ヤハズエンドウ etc
【イネ科】オーチャードグラス、イタリアンライグラス、エンバク、ライムギ、ナギナタガヤ、ソルガム、小麦、大麦 etc
【キク科】ヒマワリ、マリーゴールド etc
ホワイトクローバー(シロツメクサ)
マリーゴールド
ヤハズエンドウ(カラスノエンドウ)
ヘアリーベッチ(ナヨクサフジ)
「緑肥」と聞くと特別な植物のような印象を最初は持ちましたが、意外にもクローバーなど身近にある雑草のような存在が多く、今や帰化植物となっているものも少なくありません。例えばホワイトクローバーは外来種ですが日本中のいたるところで目にします。
海外からやってきた植物は繁殖力の強さ故に在来種の生態系を破壊してしまう恐れがあるとして、地域によっては駆除対象になっているものもありますが、緑肥としての優秀さから多くの圃場や牧場で使われるのが当たり前になっている種類もあります。それぞれの立場・環境で一長一短があると思いますが、いずれにしても緑肥の使用は地権者や周囲の方の理解を得ながら進めることも大切であると感じます。
緑肥の効果としては以下の4点が代表的です。
◎有機物が増加し、土壌中の微生物がよく繁殖する。
◎土の構造がよくなり、水はけや保水力も高まる。
◎土壌中の微生物間のバランスがとれ、病害虫の多発を防ぐ。
◎施設野菜(ビニールハウス、ガラス室など)土壌の塩類濃度を低下させる。
(※タキイ種苗公式サイトより)
緑肥使用時の大切なポイント「C/N比」
緑肥を使っていくにあたり
「C/N比率」という指標があります。Cは炭素、Nは窒素であり、これらの成分が有機物などに含まれている含有比率のことです。例えばC/N比が15と言えば、ある有機物に炭素150g、窒素10gが含まれていることを示します。この値は有機物の微生物による分解の難易、肥料効果の表れやすさ、堆肥の熟成度合を判断する指標ともなります。
有機物に対する微生物の作用(分解、無機態窒素*1の放出など)は、C/N比の高低によって影響を受けるとされており、平均的な畑地土壌のC/N比は12前後と言われています。
(*1.炭素を含まない窒素化合物のこと)
C/N比はおおむね20を境として、低い有機物(20以下)は分解が早く、しかも分解過程で無機態窒素を放出するので作物に対する肥料効果が早く現れます。一方、C/N比の高い(30以上)有機物は分解が遅く、分解過程で生成される無機態窒素が微生物の養分として取り込まれるため、肥料効果の発現が遅くなります。
[有機物のC/N比の比較]
細菌・放射菌 5
油かす 7
鶏糞 7
糸状菌 9
豚糞 11
牛糞 16
米ぬか 23
珈琲かす 23
針葉樹落葉 20~60
十分に生長した雑草 50
広葉樹落葉 50~120
剪定枝 70
光合成細菌 80
小麦わら 90
樹皮 100~1300
おがくず 134~1064
竹 280
(※wikipediaより)
次は
緑肥の
C/N比を見たいと思います。緑肥を成長させ、すき込んでいく際に大切な指標となります。
[緑肥のC/N比の比較]
ヘアリーベッチ 10~11
レッドクローバー 10~16
ダイズ 14~15
シロカラシ 12~26
ヒマワリ 13~40
エンバク 15~38
ナギナタガヤ 約20
ソルガム 34~41
トウモロコシ 20~35
稲ワラ 48~75
もみ殻 72~80
麦ワラ 約90
(※タキイ種苗公式サイトより)
先日来、私は来年
花豆を中心に栽培を考えている畑に、
もみ殻と
米ぬかをまき始めています。もみ殻は分解にしくいことは以前から知っていましたが(今回のリサーチでより理解が深まりました)、作付は来春と時間的にも間隔があるため、有害になることはなさそうと判断・実行しました。
良質の微生物を育むためには、
比較的すぐに分解される米ぬかと、
時間がある程度かかるもみ殻をバランスよくまくことで
様々な種類の微生物の働きが促進できるのではと思ってのことです。
自然界は一つの行為で働きかけると一つ進むという単純式的な進行ではなく、一つの動作が関連しながら相互・協調作用をしていくように感じるので、2、3の要素を同時に行う方が良さそうな場合が多い気がします。しかし、これは個人的な感覚的なものからの推測に過ぎませんし、自然への過干渉はご法度だと思います、、、。
そして今秋のうちに緑肥用の
イタリアンライグラスと
クリムソンクローバーの種を圃場にまいておくつもりです。あくまで理想ですが、
イネ科と
マメ科を混合して育てることで働く微生物・効果も若干異なり、それによって育てる農作物はそれぞれの良さを享受できるのではと予想されるからです。とはいえ、初めて行うのでどれほど上手くいくか、、、来春に期待です。出来る限り自然界の様子・変化を観測していきたいと思います。
この畑は長い間休耕地となっており、頑固な草やツタ類が生い茂っていました(写真は除草後です)。完全にゼロからの開墾という訳ではありませんが、一端人の手が離れて荒れてしまった畑を可能な限り
自然農法的に再生できるよう働きかけ、野菜が生育・収穫できるサイクルを自ら全て体感していきたいと考えています。
私は農業は急がば回れの教訓を度々感じています。すでに出来上がった環境や先人の努力が結晶した畑で最初から行うのではなく、何とか自力で出来そうだけど好転させるには大変そうな場所で何度もトライ&エラーを重ねながら自分なりのやり方のパターンというか、「こうしたらきっと上手くいくだろうな」という直感的な感覚をつかみ、どんな状況にでもある程度対応していける力を養っていきたいと思っています。その流れが掴めれれば、次回はさらに効率的にできるでしょうし、そのプロセスを確信をもってのぞめると思います。
様々な過程で疑問を持ち、解決し、やっぱり違ったと振り返り、もう一度チャレンジする、こういうプロセスが
農業の楽しみであるとも思います。今年のテスト栽培では上手くいかなかったものの方が多いくらいですが、それでも多くのことを畑から学ばせてもらいました。戸隠は10月に入り農閑期が近づいてきていますが、来年に向けてワクワク感・期待感が今から高まってきています。
ちなみに今回は緑肥とC/N比に焦点を当てましたが、日本の農業ではあまり語られることが少ないという、
ケイバン比率(ケイ素とアルミニウムの含有比率)と今後の記事で取り上げたいテーマと思っています。
〈参考WEBサイト〉
タキイ種苗公式サイト(緑肥の効果について)
ホクレンの肥料(土づくりのQ&A)
wikipedia C/N比のページ
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