学習意欲の高まる秋ー冷涼地での生活(戸隠地区・水谷)【転載】

水谷翔(地域おこし協力隊 戸隠地区)

2017年10月12日 21:38

(*本記事は長野市地域おこし協力隊ブログに2017/10/6にご掲載いただいたものの転載です)



こんにちは、戸隠地区の水谷です。戸隠で迎える秋もこれで2回目となります。紅葉と肌寒さが季節の移り変わりを教えてくれます。冒頭の写真は四季が豊かな日本ならではの農村の一枚、早朝6時前に撮影したものです。夏よりも光がグっと突き抜けてくるような感覚があります。

今回の記事は、秋の自然風景を写真でご紹介しながら、季節の移行に伴い感じている学習意欲の高まりに焦点を当てました。標高と身体のバイオリズムは深い関わりがありそうなのです。

さて、まずは戸隠の年間平均気温の推移を見ていきたいと思います。下記の表をご覧ください。


戸隠観光協会WEBサイトより
 
観測地は標高約1,200m戸隠神社中社エリアですが、標高差の大きな丘陵地帯である戸隠全域を地区ごとに見た場合は少々の差があるかと思います。標高は100mで0.6℃変化するとされていますので、私の住む標高約800m地点は+2.5℃くらいで考えれば良いでしょうか。いずれにしても全国の市町村の平均気温データと比較すると、かなり冷涼な場所だということがわかります。

1~3月は昼夜の平均気温でもマイナスです。夜は-15℃前後まで下がる日も珍しくなく、厳冬期の寒さは並ではありません。




9月下旬~10月にかけて戸隠ではたわわに実った稲の刈り取りが行われています

気温の低下と共に感じるようになるのは、学習意欲が高まってくるということです。今に始まったことではなく、ここ7、8年くらいこの感覚があります。最初の頃は不思議だったのですが、今では例年の変化としてすっかり馴染んできました。ですので、エネルギーが発散されている夏場のうちに突き詰めたいテーマを意識しておき、秋~冬にかけて深堀りしていくといった具合です。

二十四節気でみると10月8日頃から17番目の寒露(かんろ)という時期に入ります。「露が冷気によって凍りそうになる頃」とされています。高原では確かにその通りの気候になってきています。


国立天文台WEBサイトより

二十四節気を俯瞰してみると、秋分を過ぎて寒露となり、冬至・小寒・大寒に向かって寒い季節に突入していく様が視覚的によくわかります。エネルギー的には春→夏の拡散の時期から、秋→冬は収縮の時期に向かっていくのでしょう。"内面へ"という感覚が強まるのだと思います。一般的に「読書の秋」と言われるのも納得です。四季の移ろいを観じた日本人らしい慣習なのかもしれません。


古木を宿主として苔ときのこが生えています。絶妙ですね


ミョウガの花。都会ではなかなかお目にかかれないのではないでしょうか

どうやら脳の活動と気温は関係があるようです。ネット検索をすると体験談を含め複数ヒットしてきます。5℃くらいが良いという見方から20℃前後という意見もありますが、私個人の体感だとかなり低温の方が頭が冴える気がします。

確かに5℃前後が適切な気がしますが、5℃以下でも良いかもしれません。逆に夏場の気温が高い時期は農作業のように身体を動かすには最適ですが(日差しが強い時間は避けます)、計画を練ったり、研究したりする頭脳活動にはあまり向いていなさそうです。

標高と気温と脳の活動の関係。低気温が頭脳活動に適しているとしたら、年間を通じて冷涼な高原は実は知的生産にふさわしい条件が整いやすい環境かもしれません。

そのヒントを得るために日本中の大昔に築かれた信仰の舞台の標高を考えたいと思います。かつての時代、神社・仏閣が建造される際、その場所に縁が深い神官・高僧が必ずいたはずですが、彼らは今風に言えば超がつくほどの知的エリート達、厳しい肉体的な修業だけでなく、あるゆる学問に精通していたことは多くの史実が物語っています。

テクノロジーが無かったから情報は少なかったのでは?と現代人の感覚では捉えがちですが、実際は全く違ったようです。一つひとつの学問分野にしても、事業・仕事にしても、建造物にしても、書にしても、その水準は驚くべきほど高度です。ただ綺麗とか上手とかいうのではなく、対象への密度の濃さが桁違いだと感じます。

それらを生み出していった環境条件は何か?
標高と温度という側面から考えていくと見えてくるものがあります。

例えば、まずは栃木県の日光東照宮、標高は約630m
(徳川家康を神格化した東照大権現が祀られている)


山梨県南都留郡の浅間神社は標高約850m
(主神は木花咲耶姫)

※1

長野県諏訪市の諏訪大社は標高約800m
(主神は建御名方神、八坂刀売神)

※1

岐阜県高山市の水無神社は標高約745m
(主神は水無大神)

※1

和歌山県北部の弘法大師が開基の高野山・金剛峯寺は標高約800m


滋賀県の最澄が開基の延暦寺は標高約850m


山形県の出羽三山のひとつ湯殿山に鎮座する湯殿山神社は標高約1,100m
(祭神は大山祇神、大己貴命、少彦名命)

※1

埼玉県秩父市の三峯神社は標高約1,100m
(主神は伊弉諾尊 、伊弉册尊)

※1

戸隠神社の奥社参道は標高約1,250m
その先に鎮座する奥社と九頭龍社は標高約1,350mです。
(奥社の主神は天手力男命)





戸隠山の南麓にある鏡池。観光名所でもあります。標高約1200m

ただ、標高が低い場所にも規模の大小を問わず、信仰の事跡は数多く存在しているため、一概に標高との因果関係を決めつけてしまう訳にはいきません。しかし、標高が高い位置にあるものは古来から霊場・修験道が栄えた歴史が数多く残っているというのも興味深いです。戸隠はまさにかつてはそういう場所だったとされています。

秋は自然界の変化に富み、圃場では実るものも多く収穫作業に忙しいですが、思考に向いた季節への移行を意識しつつ次の動きの見通しを立てていきたいと思います。


野生のあけび






雑穀・ミニソルゴー


ふくらみが大きく大粒の期待が高まる花豆の莢


乾燥させた白花豆と紫花豆


圃場を横切るヤマカガシ。農作物は食べないでね

※1はwikipediaより

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