(*本記事は長野市地域おこし協力隊ブログに2016/11/19にご掲載いただいたものの転載です)


戸隠 旧柵地区の杉の紅葉の様子(11/11撮影)

冬の足音がすぐそこまで近づいてきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?戸隠担当の水谷です。

11月の半ばを過ぎ、朝が氷点下の日は珍しくなくなり、戸隠に一気に冬がやってきたような印象です。戸隠は山々に囲まれている場所が多く、午後2~3時ともなると日が陰り、夕方以降の寒さも厳しくなります。昼夜の寒暖の差の大きさも中山間地ならではの特徴だと思います。人間の生活リズムも気候の変化と共に有りという感じです。

私が住む集落には数十年前に一斉に植林された落葉松が沢山生えています。最近まで寒さにビクともしない様子でしたが、ここ1週間くらいで一気に紅葉が進んでいます。戸隠の中でも奥地とよく言われる旧柵地区・西条では緑と橙色のコントラストが美しい景色が広がる今日この頃です。

さて今回のブログテーマは「今月の活動」です。11月は地域間交流事業(戸隠⇔古牧、第二地区)への参加、都市部での農産物の販売(鬼無里の西田隊員が詳しく書いてくださいました)、戸隠中社ゲレンデでの茅刈り(茅葺き屋根に使用)など、目玉となるイベントが月中頃までに多数ありました。

一方、地味で時間を要する作業ですが、来年の野菜栽培に向けて時間の合間を縫って進めてきたことがあります。それは「土作り」です。良質な土作りのため、土地の方々からアドバイスと参考文献を紐解いたり、インターネットで情報収集をしながら、これは!と思ったら即実行の感覚を優先して取り組んでいます。これがまた面白く、最近熱中しています!

今回の記事では土作りのために取り組んでいることを3つの視点からまとめたいと思います。

1.耕作放棄地の整地
2.土壌分析
3.土中での堆肥作り





野原に霜がおりている様子(11月中旬 朝8時頃撮影)

1.耕作放棄地の整地
来年の高原花豆を中心に栽培を予定している耕作放棄地となっていた畑は9月下旬に草刈りをし、その後は土中に雑草を天然の緑肥としてすき込むため、しばらく乾燥させていました。そろそろ良い頃合いかと思い、乗用トラクターをご担当の補佐からお借りし、耕すことにしました。

ここ旧柵地区は数百万年前の海底隆起の土壌と飯綱山の噴火による火山灰土がミックスされた土壌、場所によって程度の差はあるものの、土中に岩石類がかなり多く、いざトラクターを使い始めると次から次へと刃に岩がぶつかり思うように進みません。



岩石類は放置しておくとトラクターの刃に負担をかけるのと、来年の農作業にも支障が出るので、出てくる度に一つひとつ取り除いていきました(実際はこの写真の10倍以上は取り除いたと思います)。



スコップではどうしようもないサイズの岩はツルハシとバールを使って取り除きます。こんなサイズのものがゴロゴロ出てきます(もっと大きくどうしようもないものもあります)。気が遠くなる労力のかかる作業に最初は思えましたが、遥か古代に山野を開墾していった先人達の精神に触れれる気がして、だんだん楽しくなってきました!



次の曲者は強力な根を土中に張り巡らせているでした。生命力が強く草刈機で刈っても既に新しい芽が誕生していました。さすがにトラクターでもパワー不足。そこでこちらも時間がかかったのですが、ツルハシを使って、何度も刃を入れ、抜根することにしました。



地下部約30cmまで刃を入れて取り除きました。茅は10箇所以上ありました。

ちょっとずつの動作も続けていく事でこんなに綺麗になりました!





粗削りかもしれませんが、今回の一連の作業を通じて耕作放棄地の整地のために必要なことを体験を通じて学ぶことが出来ました。今後の農作業に向けても良い経験になったと思います。

ちなみに整地前の様子はこんな感じです。



このエリアは現在80%以上が耕作放棄地となってしまっていますが陣場平山が望めるとても良いところです。私はこの景色が好きで作業の合間にいつも見て癒されています。



2.土壌分析
整地後にすぐに取り掛かったのが土壌分析です。長年何も手がついていなかった土壌はどういう成分なのか興味がありました。土をよく知ることで最適な肥料・分量や適した野菜の選択に繋がります。10月に参加した農業ワールドの際にご縁をいただいた土壌分析の専門会社に分析をお願いすることにしました。

指示のあった手順通りに土を畑の複数個所から採取しました。成分に偏りが出ないよう採取時のポイントや採取箇所へのアドバイスも頂くことができ、とても参考になりました。





検査・分析前に水分を限りなくゼロに近づけておく必要があり、今は軒下で土を乾燥させています。近日中にサンプル土壌をお送りする予定です。

土壌はPHから窒素リンカリウム(加里)カルシウム(石灰)マグネシウム(苦土)ケイ素といった多量必須元素から微量要素と言われるホウ素マンガン亜鉛、その他多種にわたるまで分析が可能とのことです。



さらに驚いたのは、元素がどういう状態で存在しているかまで分析できるという点でした。例えば窒素だと、硝酸態窒素(NO₃-N)、アンモニア態窒素(NH₄-N)、無機態窒素〔(NO₃+NH₄)-N〕、可給態窒素の4つの状態の値まで調べることが出来るそうです(もっと多いのかもしれません)。


石英(クリスタル)はケイ素(Si)の化合物です。ケイ素は地表で酸素に次いで多い元素とされ(フランク・クラーク数)、植物の進化に深く関与してきたと言われています。植物の養分吸収力を高めたり、耐病性の向上、倒伏に強くなる等とも指摘されています。

もう一つ新しく知ったのは「EC」という指標です。近年の土壌分析において重要度が増してきている値だそうで、肥料の種類・施肥量と野菜成長の相関関係を見ていく際に大切なポイントになってきそうな気がしました。

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◎ECとは何か?
ECとは電気伝導率のことで英語ではelectrical conductivityと言います。一般的に農業分野では、この頭文字を取ってECと呼ばれ、目安として肥料濃度を表します。

◎ECから分かること
チッ素、リン、カリなどの植物が生長するのに必要な肥料分はイオンの状態でしか植物には吸収されません。ECは培養液中に溶出している肥料イオンの量、つまりチッ素・リン・カリなどのイオンが測定時に使用する電極間をどれだけ移動するのか?を表した値です。
(※GROW WORKSより引用)
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3.土中での堆肥作り
100%天然資源を使っての堆肥作りを行っています。原料の90%以上は畑の雑草や霜で枯れてしまった野菜類(トマト、シソ、ツルムラサキ、花豆、大豆など)の葉・茎であり、そこに有機物を何種類か入れています。

少々変わっている部分と言えば、堆肥は地上ではなく、縦1m×横1mの約60~70cmの穴を掘り、地下で作っていることです。農業関係の様々な文献・資料に目を通したのですが、もっとも理に適っていると思われたので、今回はこの方法を選びました。

地上で堆肥作りを行うと発酵過程で熱を帯び、同時にガスが空気中に放出されますが、このガス自体が有効成分である可能性が高いと思われ、地下で作ることでガスを土に吸着させて逃がさないようにすることが狙いです。

発酵熱と発酵ガスが出ている最中は野菜の特に根に障害を与えてしまいますが、来年の春以降のための堆肥作りですので、今から4~5ヵ月を見越して準備しておけば大丈夫だろうと思います。

①穴を掘る


②雑草・枯死した野菜類の葉・茎を敷き詰め踏み込む


③米ぬか、そばがら等の有機物と微量要素を散布する


ここに水を適量かけ、上から土を10cmほど覆土し、さらに同じような草と土の層を1~2層作ります。堆肥が腐敗発酵しないよう有用微生物を活性化させるための乳酸菌入りの液肥を適量散布します。

参考文献に書かれていた内容に少々オリジナル要素も加えて堆肥作りを進めています!ちょうど今日(11/18)は全体の工程の70%が終了したところですので、数日以内に全てやりきりたいと思っています。

畑を開墾し、土壌成分を調べ、それに合うような有機肥料を施し野菜を育てていく、このプロセス全体を経験するのが初めての私は多くの時間がかかっていますが、とても遣り甲斐を感じ、今から来年野菜を育てるのが楽しみで仕方がありません。

冬の農閑期は育苗・栽培計画を立て、引き続き「安心安全で美味しい野菜を作るにはどうすれば良いか?」を考え、取り組んでいきたいと思います。

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アルストロメリアの葉


タアサイ


白菜

葉の感触は柔らかくとても零下に耐えれそうにありませんが、これらの野菜・植物は霜が降りても元気に生育しています。見かけ以上にタアサイは強く、種類が少なくなりがちな冬野菜の中では力強い助っ人的存在です。

さて、冬に成長を続ける野菜・植物の葉を見ていてふと気がついたことがあります。それは全てとは言い切れませんが、春・夏野菜よりも葉の拡がりが大きく、光の吸収量が多そう(葉の面積が広い)だということです。その葉の形は大気中を伝播する電磁波(電波)を送受信するアンテナのようです。



さて、面白いのはここからです。

植物の葉の付き方(葉序)ですが、どうもここに自然界が生み出す神秘的な法則を見い出せそうだからです。

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“葉序研究は、19世紀に科学の一分野として出現して以来、ヒマワリの種、ヒナギクの花弁、松笠の鱗片、サボテンの棘など、さまざまな植物にみられる螺旋構造にその研究対象を広げてきた。15世紀にはダ・ヴィンチ(1452~1519)が、植物の葉はしばしば茎のまわりに螺旋状に配置されていることに気がついた。

その後、ケプラー(1571~1630)が、野の花々の多くは五角形であること、そして葉の配置にフィボナッチ数があらわれることを発見した。(中略)1830年、シンパ―は、葉のつき方に簡単なフィボナッチ数が存在することに気づき、彼が「起源的」と形容した螺旋において、「開度」(茎を中心軸として、一枚の葉と、その次の葉のなす角度)の概念を発展させた。

そして1837年、ブラヴェ兄弟が、水晶のブラヴェ格子と、葉序の理想的な開度(137.5°=360°/Φ²)を発見した。(「黄金比 自然と芸術にひそむもっとも不思議な数の話」より)
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ポイントがまとまっていますが、ちょっとこれだけの文章ではわかりにくいので補足をします。

フィボナッチ数(列)と言えば、最初の2項を0, 1 として、以後どの項もその直前の2つの項の和が続いていく数列です。具体的には、0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377...と永遠に続きます。

ご存知の方も多いと思いますが、フィボナッチ数列の法則が当てはまる代表例としてよくオウム貝の形が挙げられます。



そしてフィボナッチ数と関係が深い黄金比。黄金比を端的に表現すれば「1:1.618」となります。自然界の至るところに黄金比は存在し、最も美しい比率と言われています。例えば、ギザのピラミッド、ギリシアのパルテノン宮殿、ミケランジェロやゴッホの絵画、企業のロゴマークなどにも活用されています。ちなみに1.618はΦ(ファイ)という記号でも表します。


(※1)

フィボナッチ数と黄金比の関係(前項を次項で割る)


ちなみに五芒星の長さにも黄金比が隠されています。


(※1)

話しを葉の付き方(葉序)に戻したいと思います。

先の引用文で葉の配置にフィボナッチ数列があらわれるという内容がありましたが、下記の図を見てください。これは多くの植物の葉が付いていく際に見られるパターンであり、冒頭のアルストロメリアやタアサイも恐らくそうではないかと思います。


(※2)

数字は葉が付いていく順番をあわらしています。

次のこの順番を角度の視点から見ていきたいと思います。以下の図です。


(※3)

実に面白いことに葉が1→2、2→3、3→4...と順番に付いていく際の角度が「137.5°」に近い値になることがわかっています。この137.5という数字が大切で、フィボナッチ数・黄金比と関係が深い値なのです。円は360°ですがこの値をΦ²で割ります。そうすると137.5となります。

この開度がおそらく植物が最も無駄なく効率的に太陽の光を吸収するための葉の付き方であり、光合成をしていく上で有利であると言われています

そして黄金角とは、a=222.5°、b=137.5°の関係のことを言います。


ユッカ

さて、さらに追求をしていきたいテーマは「ではどうしてこのような美しい性質を植物は持っているのか?」ということです。しかしながら、現時点では様々な研究が為されているものの、根源的な性質を解き明かすような明快な答えはまだ出ていないようです。

私たちは物質現象として発生しているものに対してはあらゆる角度から分析することで、どのような原理が存在しているかを明らかにすることは多くても(一般的に法則や原理と呼ばれるもの)、その発生の機構そのもの(潜象)に対しては判然としない方が遥かに多いと言われています。

ただ、ハッキリとわからなくても、こうした自然界の美しく神秘な現象を少しでも意識しながら、観察したり、野菜を栽培していると、ふとした瞬間に良い方法が閃いたり、何かが組み合わさって応用ができたり、そういうことに繋がっていく気がします。

農業は経験と実学的な要素が大きいですが、時間に余裕がある時はミクロ・マクロの両面から眺めてみて、何か面白い法則がないか考えるようにしています。

今回は黄金角の面から迫りましたが、植物にはフィボナッチ数列・黄金比の考え方を応用して、驚くべき法則を数多く見出すことができます。最後に写真と共に少しだけご紹介させていただきます。


ヒマワリの種の配列


カタツムリの渦巻き型の殻が形成されていく過程


シマウマの縞模様


赤キャベツの巻いていく過程と断面

〔参考・引用〕
PhiTaxis: Fibonacci digital simulation of spiral Phyllotaxis (※1)
wikipedia Golden angle (※2)
go figue (※3)


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プロフィール
水谷翔(地域おこし協力隊 戸隠地区)
水谷翔(地域おこし協力隊 戸隠地区)
三重県桑名市生まれ。
2016年5月、長野北部・戸隠に移住し農業に取り組んでいます。
戸隠は3つの巨大な活断層に囲まれたフォッサマグナ地帯であり、火山灰土+海底隆起の肥沃な土壌が魅力的です。
無農薬・有機栽培・標高850m。
高原花豆・果菜類に力を入れています。

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