ニトロゲナーゼという酵素を使って窒素固定を行うリゾビウム属の土壌微生物

※Peculiar Plants Homeより転載

慣行農法では化成肥料(窒素系有機化合物)を畑に施すことで野菜成長の栄養源となる窒素を供給するのが一般的ですが、私は自然農法で農業を行っているため、微生物を活用して畑・自然環境に負荷をかけることなく野菜への栄養供給・成長促進をしていきたいと考えています。

前々から微生物の一種である根粒菌は気になっていましたが、きちんと学んだことがなく理解が漠然としていました。最近の戸隠は連日雨が続いていますので、空き時間を活用し微生物の働きを調べることにしました。それらの情報に基づき今回のブログ内容はまとめています。

★根粒菌とは何か?
根粒菌大豆などのマメ科の植物の根に根粒(つぶ状の根のようなもの)を形成し、その中で大気中の窒素を特殊な酵素(ニトロゲナーゼ等)によって還元し、アンモニア態窒素に変換し、宿主へと供給する土壌微生物のことです。窒素は植物の成長に欠かせない物質です。よく農業で窒素固定という言葉を耳にしますが、それはこの根粒菌が窒素をアンモニアに変換する働きのことを言います。



畑の大豆を抜いて調べました。確かに小さなこぶがいくつもついています。これが根粒と言われるもので、この中に根粒菌が無数に生育し、窒素固定の働きを行っているのです。以前、畑で作業をしている時、たまたま大豆を根っこから抜いてしまい、「あれ?これは何だろう?」と疑問に思いましたが、今回その答えがわかりました。

さて、窒素固定の働きはとても貴重です。というのは、もし人工的にアンモニアを作ろうとすると、1000気圧という超高圧、500℃という高温のもとで、窒素(N)と水素(H)の化学反応が必要であり、莫大なエネルギーとコストがかかってしまうからです。人間が行うと非常に大変なことでも、マメ科の植物は生来持つ性質を使って、いともたやすく窒素を作り出してしまいます。自然界は凄まじいことを語らずとも不断に行っているので、その営みたるや驚異的としか言えません。

大豆に限らず、エンドウ、ソラマメ、インゲンマメなどのマメ科の植物や、シロツメクサ(クローバー)、レンゲソウ、カラスノエンドウ、スズメノエンドウなどの野草類も根粒菌と共生しています。シロツメクサやグリムソンクローバーなどはホームセンターの種売り場でもよく見かけます。“窒素固定をする緑肥として有効”とパッケージに書かれていることが多いのですが、ようやくそのメカニズムが理解できました。原理がわかれば応用の幅もアイデアも拡がります。

ちなみに畑に植えている野菜で他にも根粒を持つものはあるのだろうか?と思い、試しに数種を根から抜いてみましたが、大豆以外はこぶのない比較的ストレートな根をもつものばかりでした。


アップルミント


トマト



これは花豆の根ですが、根粒らしきものは見当たりませんでした。花豆はインゲンマメ属・マメ亜科に分類されていますが、必ずしもマメ科だからといって根粒を持つ訳ではないようです。マメ科は広義には約20,000種近くにもなります。

★根粒菌の姿
冒頭はリゾビウム属の根粒菌でしたが、他にはこういう姿の根粒菌もいます。




※wikipediaより転載

根粒菌は宿主であるマメ科植物から栄養をもらって生きていますが、マメ科植物も根粒菌がいることによりメリットがあります。それはマメ科植物が自身のみでは作り出せない物質を根粒菌が作ることができ、それらを享受しているからです。この状態を「共生」というのだそうです。


※秋田県立大学のWEBサイトより転載


★光合成と根粒菌の関係
光合成の原理は小学生でも習いますが、今一度確認したいと思います。葉に含まれるクロロフィル(葉緑素)が太陽の光を吸収し、そのエネルギーによって二酸化炭素と水から糖やデンプンが作られますが、この反応のことを光合成と言います。原料となる二酸化炭素は葉の気孔を通じて大気中から、水は根から吸われます。

植物は光合成によってさらに複数の物質を作り出します。それは植物の繊維成分であるセルロースや細胞形成に必要なタンパク質などです。タンパク質は炭素(C)、酸素(O)、水素(H)以外に窒素(N)も含むので、それをどこからか取り込む必要が出てきます。それで植物は土中の窒素化合物であるアンモニア(NH₃)を窒素源とします。

これで植物の光合成と共に生育過程で必要となる窒素の重要性がわかってきました。一般的に「マメ類は肥料がいらない」と言われます。それも根粒菌の理解で明確になりました。

根粒菌は空気中の気体の窒素を材料にして窒素化合物を作り出すことができます。生産した窒素を生命維持のために自分で利用するだけでなく、宿主のマメ科植物にも供給します。それでマメ科は土中の窒素+根粒菌から供給される窒素によって無肥料でも良く生育していくのでしょう。補足ながら、空気中の窒素(気体のN₂)のままでは植物は利用できず、根粒菌によって原子配合が転換されることで活用できるようになるようです。

ところで、昔の農業では田植えをする前の田んぼにレンゲソウを育て、そのまま耕す(土にすき込む)ということが良くあったそうです。野菜を緑肥として有効活用していたことが伺えます。レンゲソウの根についた根粒菌がつくった窒素化合物によりイネがよく育つということです。


※Peculiar Plants Homeより転載


大豆はコンパニオンプランツとして優れていると言われる由縁も根粒菌に注目してみて、より一層その理由がわかりました。今年私の畑でも大豆をいろいろな野菜と共に混植してみましたが、確かに他の野菜の成長を促進いるような印象がありました。これはあくまで私の予想ですが、大豆の根粒菌が作り出した窒素の一部を何らかの微生物が土中の運搬に一躍担い他の植物にも栄養供給をしているのではないか、そんな気がしました。

〔窒素循環の仕組み〕

※wikipediaより転載

★根粒菌の可能性(ゲノム解読の視点より)
かずさDNA研究所様のWEBサイトに約16年前に発表されたもののようですが、大変興味深い記事が掲載されていましたので、ご紹介いたします。

〔転記開始〕-----------------------------------------------------------------------------------------

かずさDNA研究所は根粒菌ゲノムの全塩基配列決定を完了した。これは、窒素固定を行う生物として世界初の成果であり、同時にこれまで配列決定されたバクテリアゲノム中最大である。この成果は、DNA Research誌12月号に発表される。

配列を決定した根粒菌は、土壌細菌の一種で、マメ科植物ミヤコグサに共生し窒素固定する能力をもつメソリゾビウム ロティ(MAFF303099株)である。根粒菌のゲノムは、一つの染色体と二つのプラスミド(小型の環状DNA分子)からなり、染色体は7,036,074塩基対、プラスミドは各々351,911塩基対、208,315塩基対(ゲノム総合計:7,596,300塩基対)である。配列決定は、ゲノム長の約8倍の配列データから全体を構築し(whole genome shot-gun方式)、さらに配列確認反応と長鎖クローンを用いた全体構造の再確認を行っており、決定した塩基配列の精度は極めて高いと考えている。

根粒菌ゲノムの全構造が解明されたことには、以下のような学術上、また農業への応用上の意義がある。

窒素源の供給は、云うまでもなく植物の成長を決定する重要な要因の一つである。植物は自身では大気中の窒素を利用することができないため、窒素源として、外部から供給された窒素肥料または根粒菌との共生(共生窒素固定、マメ科植物に限られる)によって固定された空中窒素のいずれかに依存しているが、多くの農業植物は根粒菌と共生しないため窒素肥料に大きく依存している。しかし、窒素肥料の生産はハーベイ法によるが莫大なエネルギーを必要としている他、土壌環境汚染による環境問題など多くの問題点を抱えているし、農家にとっては窒素肥料の生産コスト、運搬コストなど農業経営上の問題も多い。

根粒菌による共生窒素固定のメカニズムが明らかになり、もし他の植物でも共生窒素固定が可能になれば将来の農業を考える上でそのインパクトは極めて大きい。このため根粒形成、窒素固定のメカニズムの解明や関連遺伝子の単離などに向けて、国内外の多くの研究者が精力的に研究を進めている。この意味からも今回のわれわれの根粒菌ゲノムの全構造解明は、共生窒素固定の解明に大きく貢献するものと考えられる。

一方、土壌中には多種多様な微生物が生息し、それ自体の生態系を構築し物質循環や有用物質生産に貢献していると考えられてきた。また、上述したように、根粒菌などは植物と特に密接な関わりをもっており、農業上重要な役割を果たしている。にもかかわらず、ゲノム解析ではヒト病原菌や古細菌などが先行し、この分野に関係する生物のゲノム解析は皆無に近い状態であった。今回の解析によって農業生産に関りの深い根粒菌のゲノム全構造が明らかにされた結果、一般土壌細菌の遺伝的基盤、土壌中の生態系における役割や生物進化の研究にも多大の貢献することが期待される。

このように根粒菌のゲノム全構造解明によって可能になると思われる共生、窒素固定の各過程に関与する遺伝子の探索と単離、共生窒素固定系の再構築、マメ科以外の植物への共生窒素固定系の付与などを通して、窒素肥料にかわる空中より直接窒素を窒素肥料としての供給法の開発とそれによる窒素肥料使用量の画期的低減という人類の長年の夢への道が大きく開かれたといえる。


(※文章の強調・カラーはブログ執筆者によるものです)
-----------------------------------------------------------------------------------------〔転記終了〕
※転記元のWEBページはこちら

本文中で紹介されているように、空気中の窒素を植物へ直接供給を可能とする技術や窒素肥料(化成肥料)を低減しつつも植物を生育良好にできる技術の実装化が可能になれば、農業が新しいステージに入っていくことと思います。

そしてそれが自然循環から逸脱しないものであればより一層魅力的に感じます。農業は古き良き知恵と先端科学が融合しやすく、それでいて生命と密接に関わる尊い仕事であると、認識を強めました。

〈参考WEBサイト〉
秋田県立大学コラム(根粒菌)
実験観察館(根粒ってなに?)
かずさDNA研究所(根粒菌ゲノムの完全解読について)
Peculiar Plants Home(Rhizobacteria)
wikipediaの根粒菌のページ

★ブログランキングに登録しています。
↓クリックして応援いただければ幸いです^^↓


長野県 ブログランキングへ

にほんブログ村 ライフスタイルブログ ナチュラルライフへ
にほんブログ村へ
(*本記事は地域おこし協力隊ブログに2016/9/24にご掲載いただいたものの転記です)



こんにちは、戸隠地区担当の水谷です。ここのところ中山間地域は1週間以上の長雨が続いています。農作業が進みづらかったり、土砂災害のリスクが高まったり、皆が天気の回復を願っています。そう言えば、夏は猛暑日が長く続きました。地球規模での異常気象を夏~秋の農作業を通じてより直に感じています。
 
さて、上の写真の綺麗な黒と紫色が混色したお豆をご存知でしょうか?
 
これは標高800m以上が栽培適地とされる「高原花豆と言われているもので、「紫花豆」「ベニバナインゲン」とも呼ばれます。戸隠に移住後、すぐに農業を開始し、気候風土に適した野菜は何か?を考え探ってきました。春~夏野菜の栽培を通じて出た見解の一つとして「戸隠という高原地は花豆の栽培が適している」ということです。多くの魅力も感じていて、来年は栽培に力を入れたいと考えています
 
花豆は餡子や加工されてお菓子に、高級食材として和食やお節料理などでも重宝されています。色合いが美しく活躍の幅が広い花豆を"美味しく魅力的"という観点から今回の記事をまとめさせていただきます。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------
高原花豆について
ベニバナインゲンはメキシコの高原原産のインゲンマメ属の多年草(日本では一年草扱い)。花豆(紫花豆)ともいわれる。大航海時代に欧米に導入され、日本へは江戸時代末期に渡来したが当初は観賞用にとどまり、本格的な栽培が始まったのは明治時代に入ってからのことである。寒冷な気候を好み、日本では主に長野県や北海道および東北地方で栽培される。花は紅色で豆には虎斑模様がある。変種に花や実が白いシロバナインゲン(白花豆)がある。日本では熟した豆を煮豆や甘納豆、餡の原料とすることが多いが欧米では若い莢を食用とする。インゲンマメ同様に毒性のあるレクチンの一種フィトヘマグルチニン(PHA)を含むため、調理の際はよく火を通す必要がある。


(※文章・画像はwikipediaより転載)
--------------------------------------------------------------------------------------------------------

先日、落花生を長年栽培し、無添加のピーナッツバターや低温での玉締搾りによる落花生油など、こだわりの高品質な加工品の製造・販売を手掛けていらっしゃる方から、こんな有難いアドバイスを頂きました。

「魅力を感じた野菜を栽培する時は、その原産国や気候風土を知ることが大切。本来の種の遺伝子にどんな情報が記憶されているか、そういうことも考えながら野菜と対話をする気持ちで育てると良いですよ」

原産国は南米のメキシコの高冷地であり、戸隠もおそらくよく似た環境であると思われ、適地であると感じています。トップの花豆の写真は、ちょうど標高800m付近で今年私の畑でテスト栽培を試み、収穫できたものです。

高原花豆と言われるくらいで、標高が800mを下回ってくると花は綺麗に咲くもののその後、鞘が大きくならず、豆の結実に至らないようです。たとえ豆が出来ても、小ぶりになってしまいます。


観賞用にもなる紅色の美しい花が一つのツルからいくつも咲きます

花豆は北海道や長野県、群馬県などで盛んに栽培されていますが、「30mm以上の大粒・良品」と判断されるものはいずれも標高が高い冷涼地のものとよく聞きます。

ちなみに写真のお豆の平均サイズは33mmほどで、一番大きいものは40mm程度です。最高級品として評価されるものでは45~50mmに達するとのことで、このメガサイズには驚きました。50mmレベルの栽培には今後より一層の研究が必要です。標高がもっと高くなければいけないのかもしれません。

★花豆の来年の栽培に向けて
まずは今年の生育状況を整理したいと思います。以下の写真をご覧ください。



これくらいの鞘がつけば、中身は30mm以上のものが期待できそうです。あとはタミング良く収穫時期を待つだけです。それに大切なのは風通しの良いこと、ツルが太陽の光を求めて勢いよく伸びていくので、上手に誘引する必要があります。



これはツタと葉が密集しすぎてしまっている状況です。外側にいくつか鞘はできますが、風通しが悪いため内側ではあまり鞘ができていません。花豆の植え付け時の理想は、株間を約1m程度と広めにあけることのようです。実際、私のテスト栽培でも広めに株間をとったところの方が鞘のなりが多くなっています。

テスト栽培は上手く行かないと言われているパターンも行ってみることに意義があると思われ、私は出来る限りどんなパターンも試しています。そこから意外なほど、沢山の学びを得る事ができます。



次に必要なのは支柱の高さです。これはわざと50cmくらいの低い支柱で植え付けたものです。結果として、低地でツタが何重にも絡み合い、風通しが悪くなり、鞘はほとんどできていません。

高さという点では、ホップ栽培で使われる支柱が理想と先輩農家さんから教えて頂きました。ただし、これは設備に費用がかかる上、支柱が3mを超えてくると収穫も脚立を使用しなければいけない等、迅速にアクションが取りづらいところがあります。しかしその分、高品質のものの収穫率が向上することと思います。

参考までにホップ栽培の支柱の写真です。



私は来年の栽培に向けて、地元の地権者さんとご相談の上、標高約850m付近耕作放棄地の除草作業を今週から初めています。ひとまず約2反(600坪)の草刈りを終えたところです。除草後の草は燃やして草木灰にするか、燃やさずに乗用トラクターで耕して土中にすき込むか検討中です。いずれにしても、ちょうど今が稲刈りのシーズンでぬかが大量に出ていますので、枯れ草の発酵と微生物活動を促進させるため、ぬかは全面にまこうと思っています。

花豆の種の植付けは来年の5月中旬~6月を予定していますが、戸隠は10月半ばを過ぎると急激に気温が下がり、霜がおりる可能性があると地元の方々から言われましたので、早めに準備を進めています。

植付け時期は一般的には5月に入ってからと言われていますが、地元の先輩農家さんから伺ったお話しですと、7月に入ってからでも良いとのことです。と言うのも、早めに種をまいて暑い気候と開花時期が重なると鞘が大きくなりにくく、ロスが発生するからだそうです。ただ逆にまき時期が遅いと、秋~冬への移行期の霜の害も気になります。タイミングはどこが最も良いか、この地の自然の移ろいをよく観察する他ありません

コスト・手間の面から最適な支柱の検討は冬の農閑期の宿題と思っています。一部として、破竹が良いと思い、4mほどのものを約30本、戸隠支所の職員の方のご厚意で譲っていただきました。農業資材も天然素材が活用できれば魅力的です。しかし、2反分の資材を全て破竹というのはかなり大変ですので、様々な可能性を柔軟に考えていきたいと思っています。

除草・整地作業を進めている農地の様子です。少しでも耕作放棄地が蘇り、戸隠の気候風土が活かされた魅力的な農産物が栽培できればと思います。







自然が豊富な高原地は生命エネルギー高い野菜栽培の適地だと思います。

★花豆を使った美味しい和菓子「鯉焼き」
鯛焼きならぬ、「鯉焼き」です。口全体に広がる自然な甘みがとっても美味しい!中の餡子は長野県産の花豆を主に使って作られているそうです。



先日門前まちあるきという善光寺周辺の魅力的なスポットをめぐる企画に参加させていただいたのですが、その中で藤田九衛門商店さんという和菓子のお店に立ち寄りました。「鯉焼き」という印象的なネーミングや味のクオリティの高さ、そしてなんと言ってもお店の独特の心地よいムードやしつらえなどから、多くの人に知られ、親しまれているようです。

私は今回のまちあるきで初めて知ったのですが、フワっと広がる自然な餡子の甘みに感動しファンになりました。それに長野県の地元の戸隠・鬼無里産の花豆を使っていらっしゃるとのことで、地元で良いめぐり・流れをつくっていらっしゃるご姿勢にも尊敬・共感いたしました。

最初にも書きましたが、花豆は外見の美しさと共に活躍の場がひろく、栽培に魅力を感じます。しかし、栽培環境が限られることと、栽培(設備)・収穫の手間がかかることから、担い手が全国的に減少傾向にあるようです。こうした時代背景の中、私も出来る限り、良いものを継承していきたいという気持ちで来年のぞみたいと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。

○花豆栽培の以前の記事はこちら

★ブログランキングに登録しています。
↓クリックして応援いただければ幸いです^^↓


長野県 ブログランキングへ

にほんブログ村 ライフスタイルブログ ナチュラルライフへ
にほんブログ村へ


もともと味噌納豆などの発酵食が大好きな私はすっかりその味わい深さ、奥深さに魅了され、ここ2年ほど手前味噌づくりをおこなっています。

写真は今年の2月、室内でも2~3度という寒い中で仕込んだ味噌を天地返ししている様子です。久しぶりに容器のふたを開けてみると、ふわっと発酵途中の味噌独特の香りが部屋中にただよい、この時点ですでに食欲がかき立てられました。

しかしながら、雑菌が混入したのか、上蓋と側面に青カビが少々ついていました。綺麗に取り除き、木べらで丁寧にかき混ぜておきました。発酵と腐敗は表裏一体の現象、少々カビが出るくらいはあまり気になりません。

味見をしたところ、発酵度合がまだ足りず、しょっぱすぎる印象です。味噌の発酵の最適期間は地域・環境によってそれぞれだと思いますが、家で手軽にできる手前味噌だと、おおよそ10~12カ月くらいが丁度良いそうです。あと3~4カ月くらいでしょうか。




原料の大豆はその硬さゆえに内側のエネルギーの高さを感じます。


味噌汁は日本人のソウルフード!パワーが漲るので毎日食べています。

ここ長野県は信州・発酵食文化がさかえてきた地であり、長寿県とも言われています。

長寿の秘訣は何か?に迫る書籍は多く、共通している内容の一つに「発酵食を他県以上に摂取しているから」という見解があります。

健康で長寿は誰もが願っていることですし、近年ますます海外からも発酵食が注目されています。せっかく長野県に住んでいるので、今回は発酵食・味噌のリサーチ内容をベースにその魅力をご紹介したいと思います。

➀味噌はどういう種類があるのか?
1.米味噌
大豆に米麹、塩を加えてつくる味噌です。国内生産量の80%を占めます。米麹の比率が高いものは甘味噌、低いものは辛味噌と呼ばれます。

ちなみに私の仕込んでいる味噌もこの米味噌です。無農薬大豆・良質の玄米麹を原料にして作ったのですが、原料は創業100年以上のマルカワ味噌さんの通販で購入させていただきました。「土からこだわって良質の大豆を栽培し原料とする」という味噌造りへの想いに共感し2年連続で原料を求めています。

2.豆味噌
蒸し大豆を直接麹にしたものと塩を合わせて長期熟成させます。濃厚なうま味とかすかな渋味があり、主に愛知・三重・岐阜で造られています。

3.麦味噌
大豆、麦麹、塩で造るみそ。農家が自家用にしていたことから「田舎みそ」の別名もあります。バランスのとれた奥深い味わいが特徴です。

お味噌は大きく分けるとこの3種類になるかと思います。

②日本は発酵食の宝庫と良く言われるけど実際はどんな種類?
夏に高温多湿となる日本は発酵に適した気候に恵まれており、カビ・菌は水分や湿度があるところで繁殖するため、日本では発酵食文化が発達し、世界でも有数の発酵大国になったようです。

1.酵母菌(アルコール発酵を行う菌類のひとつ)
ワイン、ビール、パンなど

2.細菌(分解して作り出すものの名前がその細菌につけられることが多い。例えば納豆菌など)
キムチ、納豆、ナチュラルチーズ、ヨーグルトなど

3.カビ(発酵に使われるカビには麹菌や白カビ、青カビなどの種類がある)
かつお節、甘酒など

○みりん、焼酎・・・酵母&カビ
○果実酢・・・酵母&細菌
○味噌、日本酒、穀物酢、醤油・・・酵母&カビ&細菌





発酵食は日本独自のものではなく、パンやヨーグルトなどは海外から伝えられたものですし、他にも私たちの食生活の中に取り入れられているものもあります。

気候風土や生態系の違いによって微生物の種類も異なってくるようです。これが大きな要素となり、世界中には多種多様な発酵食品が生み出されてきました。雨が多いモンスーン気候のアジアと違いヨーロッパは乾燥した気候なので、カビを利用した発酵食品は少ないのですが、フランスの白カビを利用して作ったカマンベールチーズは有名です。ブルーチーズはロックフォルテという青カビが発酵・熟成に欠かせず、このカビがブルーチーズ独特の風味や味わいを生むそうです。



アジアだと、小魚を塩漬けにして発酵させたタイのナンプラー(漁醤)が有名です。ベトナムにはニョクマム、ラオスにはナンパ―という漁醤もあるそうです。またイタリアのアンチョビも比較的身近にある海外の発酵食かと思います。

③発酵食の持つ力について
ここが一番気になるところです。発酵食の力は大きく4つに分かれそうです。

1.腐りにくさ(=保存が良くきく)
冷蔵庫がまだない時代には、発酵食品が保存食の重要な位置を占め、優れた貯蔵方法として人々が工夫し行ってきました。

2.栄養価が高くなる
発酵という現象は微生物の働きですが、微生物は増殖をしながら、生命を次世代にバトンタッチしていくために栄養素を自ら作り出し、子孫に届けるそうです。この栄養素を発酵食と共に私たちも頂くわけで、人間の身体の中に住む微生物も喜び相乗効果で栄養価がさらに高まるのではないでしょうか。

3.味と匂いの良さ
発酵の前後では香りが全く異なります。人によって好き嫌いはあるにせよ、良質な発酵状態の香りは食欲もそそられることながら、生命も喜ぶ香りだと思います。

4.人工放射能の分解・排出を促進させる
人工放射能による被爆テストで、味噌や醤油などの発酵食を食べることによって体内の残留放射性物質の排出が高まるという結果は食や環境問題に関心が高い方の間ではよく知られています。興味深いのは味噌の摂取により、細胞自体の再生スピードも飛躍的に高まることです。

味噌のパワーは本当に高く、朝と夜に1杯ずつ豆腐の味噌汁を飲めば、現代人が1日に必要とするたんぱく質を摂取できるというデータもあります。しかも、肉や魚などの動物性たんぱく質よりも効率的に多く摂取できるそうです。

全国の味噌の生産量という点から見ると長野県がダントツであり次に愛知県、群馬県へと続きます。

1位 長野県 20,817 t
2位 愛知県 3,504 t
3位 群馬県 2,712 t

4位 北海道 2,343 t
5位 大分県 1,759 t
6位 山梨県 1,258 t
7位 広島県 973 t
8位 京都府 965 t
9位 徳島県 946 t
10位 富山県 763 t
(出典:食糧醸界新聞 2014年データ)

ちなみに九星気学では私は本命星・月命星ともに五黄土星であり、ある人からは「五黄土星は発酵がキーワードだから、発酵食が向いていますよ」と言われたこともあります。発酵食自体がとても好きなので、関わっていく中で良い流れが出来ていけばと思います。

さて、私の畑の大豆ですが、ここ数日続く大雨で葉っぱが少々下降気味ですが、順調に鞘は膨らんできています。ただ6月に直播きをした際、畝幅の最適な距離がわからず、今年は密集しすぎてしまった感があり、残念ながら一部の大豆が倒れてしまいました。来年に向けて要改善です!



戸隠での農業開始当初から、自分で作った安心・安全な無農薬大豆を使い、標高800mの冷涼地にて戸隠山からの伏流水を活用した寒仕込み味噌を作りたい!という想いで大豆を育ててきました。今年は収穫できた分だけでも良いので、自分なりのこだわりの味噌を仕込みたいと思っています。

◎参考文献
「図解でよくわかる 発酵のきほん」 舘博著 誠文堂新光社
「素材よろこぶ 調味料の便利帳」 高橋書店
「信州の発酵食」 小泉武夫・横山タカ子著 しなのき書房

★ブログランキングに登録しています。
↓クリックして応援いただければ幸いです^^↓


長野県 ブログランキングへ

にほんブログ村 ライフスタイルブログ ナチュラルライフへ
にほんブログ村へ


先日夏野菜を贅沢に使い焼き茄子のサルサソース風を作りました!

無農薬・自然栽培で育てられた味わい豊かな茄子と酸味の中にピリッと刺激のある特製サルサ風トマトソースが絶妙に絡み合い美味でした。

茄子は奈良時代に中国から伝わり、漢方では身体を冷やす野菜として、鎮痛や消炎のために使われてきたそうです。血行の促進や利尿作用にも優れ、「秋なすは嫁に食わすな」ということわざもあり、身体を冷やすことにより流産を心配する気遣いから生まれたとも言われています。

茄子の機能成分として注目されるのは皮に含まれる色素成分のナスニンという物質。これは強い抗酸化作用があるアントシアニン系の色素で、コレステロールの酸化を防ぎ、細胞の老化やガン化を抑える作用もあるようです。

野菜の栄養素・成分をしっかり押さえておくと食べることがより一層楽しくなります。料理をする時にも他の野菜との相性や組合せのアイデアも広がっていきます。

さて、今回のこの料理、自然食を専門とする方から作り方を教えて頂いたのですが、個人的にはかなりのヒット作であり、レシピをご紹介させていただきます。

まずは茄子を適度なサイズに切り、グリルで単独で焼きます。





サルサ風ソースを作っていきます。使う食材のベースはトマト(自作)、タマネギ、パプリカです。





料理は味もそうだけど見た目も大事、目でも楽しめることが美味しさを引き立てる大切なポイント。何よりも料理は毎日簡単に取り組めるクリエイティブさを鍛えるための最適な動作だと以前教えていただいたことがあり、その通りだ!と納得しました。今では料理は日々の生活の中でなるべく自分でするように努めています。

切り方を意識し食感への配慮を、色のバランスを、出来れば細やかな栄養価への気遣いも、、、。

トマト、タマネギ、パプリカをみじん切りにします。



ここで触れておきたいのが写真右上の黒色のソースです。



これは何だかわかりますでしょうか?

実はこれは信州の伝統野菜「ぼたんこしょう」を醤油のもろみ成分とミックスをした特製ソースです。



ぼたんこしょうは見た目は背の低いピーマンのようですが、唐辛子のように辛いことが特徴です。炒め物に少し入れてアクセントを出したり、丸焼きにして辛味と共にふんわり漂う旨味を楽しむ方もいるようです。

野菜とソースを混ぜていきます。が、ここでさらに旨味を出していくために、これまた特製の味噌を隠し味に入れることにします。



この味噌は信州で100年以上の歴史を持つ老舗の味噌蔵酢屋亀本店さんから先日購入したもので、細かく刻まれたニンニクやスパイシーな成分が入っている豆板醤のような風合いを持つとても美味しいお味噌です。



これであとはグリルで適度に焼いておいた茄子にドバっと勢いよくソースをかけて完成です!



とっても美味しい!!

9月も中旬を過ぎ夏野菜も数が少なくなってきて少々寂しいですが、この夏、料理をした中で特に見た目も味も良かった焼き茄子のサルサソース風のご紹介でした。

★人気ブログランキングに登録しました。
↓クリックして応援いただければ幸いです^^↓


長野県 ブログランキングへ

にほんブログ村 ライフスタイルブログ ナチュラルライフへ
にほんブログ村へ


9/11~132泊3日、埼玉県越谷からはるばる鬼無里・戸隠へと訪れた男子中学生4人を「ふるさとふれあい体験」農家民泊先として受け入れを行いました。今回は鬼無里が中心となり300名以上の生徒さん達が来ることになったとのこと、普段は静かな中山間地に活気ある若いエネルギーが流れたように思います。同地区の方々も「子供の元気な声が沢山聞こえるのは久しぶり!」と喜んでいらっしゃいました。

今年は熊本の地震の影響で田舎の受け入れ先が減少し、長野が例年よりも多かったそうです。ですので、農家民泊の実行委員と事務局の方々の裏方の仕事は相当お忙しかったとお聞きしました。子供達が来るとあって、細やかな部分まで留意・配慮が必要でしょうし、宿泊中は気も休まらなかったと思います。お疲れ様でございました。

さて、私のもとにやってきてくれた4人は空手・ボクシング、サッカー、柔道に精を出す体育会系の元気一杯の男子生徒。中学生とはいえ、受け入れ側として気を遣う場面も多かったですが、エネルギーの高さはさすが!で、一緒に過ごしていると楽しく、本当に良い勉強となりました。

何と言っても一番驚いたのは彼らの感性の良さ・高さです。戸隠という場所の事前情報はほとんど無かったようですが、到着と同時に「パワースポットに行きたい!」と満場一致のリクエストがあり、一日目は予定を変更して、戸隠の大自然を存分に体感できるプチツアーを決行しました。

戸隠の大自然と言えば、戸隠山そのものの姿、鏡池、奥社参道(巨大な杉並木)~奥社・九頭龍社参拝ルートが素晴らしいので、ここに連れていってあげることにしました。

私の住む地区から宝光社エリアに抜ける地元住民以外はほとんど通らない山道からの戸隠山の眺めは絶景で、ここに到着すると全員が「こんな景色は見たことがない!」と感動してくれ、4人でヤッホーを全力で行っていました。

「木が背が高い」「空気が美味しい」「岩肌がすごい」「雲が近い。動きが早い」と感性豊かな言葉が沢山出ており、戸隠を好きになって移住した私としても嬉しかったです。


戸隠山が一望できる山道からの眺めは私も特に好きで中学生も感動してくれました。

鏡池から奥社参道に至るまでの遊歩道の途中に山々からの伏流水が流れる場所があります。ここでブレイクタイムをかねて腰をおろして、新鮮な水を飲んでみたら?と提案してみると、案外抵抗感もなく、ゴクゴクとみんな飲んでくれました。山の岩石を通り、自然が作った水路を長い時間をかけて通ってきた水、口当たりは意外なほど甘くまろやかで美味しく、新鮮さは市販のボトルウォーターの比ではありません。その良さも感じてくれたようでした。







1日目は戸隠案内で終わってしまいましたが、満足してくれている様子でした。

夕食は全員に料理・配膳も手伝ってもらいました。食事は田舎ならではのムードを出せるように新鮮野菜をたくさん使ったグリーンカレーを食べてもらいました(でも彼らにはインドカレーは辛すぎたよう)。



2日目は農業体験として、秋・冬野菜の白菜・キャベツ・水菜の植付けを行うこととし、除草作業→畝づくり→苗の定植と一連の動きを体感してもらいました。農作業は初めてで、クワやカマを使ったことはほとんど無いようでしたが、さすが体育会系、除草作業のスピードは早く、瞬く間に畑を綺麗にしてくれました。正直、ここ最近は地域での活動も忙しく畑の手入れが思うように出来ていなかったので、とても助かりました。



丁寧に植え付けをし、自然農法でのやり方を活かし苗の周囲には草マルチを施しました。微生物の働きで草が分解されて土に養分となって戻ることを中学生に伝えると興味深く聞いてくれました。

お昼はせっかく信州に来てくれたので郷土食おやき作りを行いました!
先日ブログでご紹介させていただいた同地区の方から教わったおやき作りが大変役立ちました。




全員が料理も一生懸命取り組んでくれました!





農作業の後ともあって、すぐにおやきを残らず完食してくれました。

2日目の後半は周囲10m・樹高30mはあろうかという巨大な杉の木と巨石が鎮座する岩窟観音という観光客も訪れることが少ない穴場スポットや北アルプスを一望できる大望峠、そして私の住む地区の見晴らしの丘に行き、様子を見にお越しになられた引率の先生方と生徒のみんなと記念撮影をしました。





嬉しかったのは、ご近所の皆さんも農家民泊の受け入れを好意的に思ってくださり、時折様子を見にきてくれ、畑で取れたてのスイカやキュウリ、レタスを差し入れてくださいました。お蔭様で食卓がより豊かになりました。



楽しい時間はあっという間に過ぎ、気づけばお別れ会の時間、年齢は違っても同じ感性を持ち、同じ場所で感動を共有できた彼らとのお別れは、やはり寂しいものがありました。が、今回の感動・経験を少しでも今後の活動・進路に役立たせてくれればと思います。

受け入れは初めてのことで、事前準備から2泊3日の間は大変なことも幾つかありましたが、本当に良い経験であり、田舎暮らし・農業の素晴らしさを再認識できる機会ともなりました。今後も定期的に受け入れを行っていこうかと考えておりますので、次回に活かしたいと思います。

★人気ブログランキングに登録しました。
↓クリックして応援いただければ幸いです^^↓


長野県 ブログランキングへ

にほんブログ村 ライフスタイルブログ ナチュラルライフへ
にほんブログ村へ
プロフィール
水谷翔(地域おこし協力隊 戸隠地区)
水谷翔(地域おこし協力隊 戸隠地区)
三重県桑名市生まれ。
2016年5月、長野北部・戸隠に移住し農業に取り組んでいます。
戸隠は3つの巨大な活断層に囲まれたフォッサマグナ地帯であり、火山灰土+海底隆起の肥沃な土壌が魅力的です。
無農薬・有機栽培・標高850m。
高原花豆・果菜類に力を入れています。

Facebookページはこちらから



Instagram
インスタグラムのページ



長野県 ブログランキングへ

にほんブログ村 ライフスタイルブログ ナチュラルライフへ
にほんブログ村へ
オーナーへメッセージ
< 2016年09>
S M T W T F S
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 6人
QRコード
QRCODE
インフォメーション
長野県・信州ブログコミュニティサイトナガブロ
ログイン

ホームページ制作 長野市 松本市-Web8